インタビュー

VOL04 城山茶屋・尾嶋典善さん

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小仏城山の頂で三代にわたり登山客を癒すオアシス、城山茶屋

小仏城山(正式名称:城山/標高670.3m)は、奥高尾を楽しむときに高尾山を出て最初に出会う山です。そこで長年、登山客を温かく迎えてくれている茶屋があります。その名も城山茶屋。「なめこ汁」や夏季限定の「特大かき氷」、そして何よりも笑顔で訪れる人々を癒してくれるところです。今回はそんな城山茶屋の店主 尾嶋典善さんに、お店の歴史やあのメニューの裏話、日頃のご苦労や登山客の皆さんへのメッセージなど沢山のお話をうかがってきました。

インタビュー・テキスト:尾澤 浩一(編集部) 写真:滝 将之(編集部)

尾嶋 典善(おじま のりよし)

1974年生まれ。小学校時代から城山茶屋でアルバイトを行う。23歳から先代(ご両親)と共に現職に従事。8年前から三代目店主となり現在に至る。相模湖商工会青年部部長としても活躍。

山とともに70余年。三代続く茶屋の歴史

――それでは最初に、城山茶屋の歴史を教えていただけますか?

尾嶋:私で三代目になります。もとは私の祖父と祖母が始めました。祖父は大学の教授もやっていたので、実際は祖母が切り盛りをしていたようです。
そもそも親戚が相模川で釣り堀をやったり、登山道の中腹で飲み物などを販売する店をだしていたようで、それが始まりです。当時は相模湖からの登山道が大変賑わっていたんです。

――相模湖から沢山の人が来ていたんですね。

尾嶋:そのようです。当時はまだ水筒などもあまり無い時代で、持ち運びもしなかったんですね。そこで道の途中で瓶のジュースなどを出していて、登山客の喉を潤していたようです。

――なるほど。それで需要の高まりから現在の場所にお店を出したんですね。

尾嶋:はい。もともと山頂は、今のように広くはなかったんです。篠竹が沢山生えているような藪だったらしいです。そこを草刈や、整地して今のように広くなったみたいです。

――整備もご自身でやられたんですね。

尾嶋:そうなんですよ。ここにある桜の木は、父が中学校の時に植えたと言っていました。かれこれ60年くらい前の話です。
また、それまで商品は背負い上げだったので、飲み物やお茶など、ちょっとしたモノを出していたようですが、東京オリンピックの翌年くらい(昭和40年)に城山に電波塔が建って、その後に電波塔を管理するための道ができたんですね(これが現在の日影沢林道)。
当時、父は背負い上げで資材運びの手伝いなどもやったので、その道を優先的に使わせてもらえるようになったんです。

城山茶屋。今では多くメニューで登山客をもてなしてくれる。
城山茶屋。今では多くメニューで登山客をもてなしてくれる。

――そうでしたか。それで今はお店までの運搬や通勤に、あの林道を使われているんですね。しかし、それまでの背負い上げ時代はきつかったんでしょうね。

尾嶋:そうですね。相模湖からのルートは直登に近いですから。やはり背負い上げだと、やりきれない事も多いので。
ちなみに、背負い上げで荷物を運ぶ人は休憩する時も腰を下ろさないんですってね。腰を下ろすと立てなくなるので、寄りかかって休むんですよ。
私も子供の頃はこの辺りも走りまわっていましたが、今は膝が笑います(笑)。

名物「なめこ汁」と「特大かき氷」

――話は変わりますが、こちらで出されているメニューのことを伺います。まずは名物「なめこ汁」について教えて下さい。

尾嶋:毎朝8時過ぎから仕込んでいます。原材料の豆腐は、裏高尾にあるお豆腐屋さん「峰尾豆腐店」から仕入れていて、水もそのお店が使うのと同じものをもらってきて作っています。

―― 一日に何杯くらいでるのでしょうか?

尾嶋:シーズンや日によって違いますが、シーズン中は平均して200~300杯くらいですね。

名物なめこ汁。身も心も暖まります。
名物なめこ汁。250円。身も心も暖まります。

――なめこ汁といいますと、味噌のイメージがありますが、こちらは醤油仕立てですね。

尾嶋:はい。うちでは父の時代からなめこ汁を始めたのですが、何か特色を出したいということで醤油仕立てにしています。
そもそも、お味噌って煮立たせたり煮込んだりすると風味がとんだりしますよね。
醤油だと煮込むと美味しくなりますし、豆腐屋さんらからいただくお水との相性も良いので。

――これは是非お聞きしたかったのですが、夏場のメニューに「かき氷」がありますよね。最初にいただいた時、その巨大さに圧倒されました(笑)。あれはいつ頃から始められたのですか?

尾嶋:もう15年前くらいでしょうか、私が23~4歳の頃に始めました。
父がやっていたままでは物足りなくなり、加えて当時は夏場のお客さんが少なかったんですね。そこで何か“目立つ”ことをやりたいと思い、父と話をしたときに「かき氷でもやってみるか」と。
ただやるのでは面白くないし、頼んでくれたお客さんが、ワッと驚いて、印象に残っていただければと思って始めたのがきっかけなんです。
やはり、知ってもらって、感動してもらい、結果としてお客さんが、また来てくださればと思っています。
味のバリエーションを増やしています。お客さんによっては「全種類、制覇するんだ」なんて言ってくださる方もいます。

こちらも名物「かき氷」。笑ってしまうほど大きい!
こちらも名物「かき氷」。笑ってしまうほど大きい!

――私も来年は全種類制覇させていただきますね(笑)。

2ページ:手作りの丸太小屋 千秋崇學舎 »

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