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【自然講座】ムササビの食生活から見える高尾山の豊かさ

自然ガイド

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高尾山にムササビが生息していることは知られていますが、なぜ高尾山にいるのかというのはご存知でしょうか?
その理由を、ムササビの観察ツアーも行っている自然ガイドの宮田浩さんに解説してもらいました。
高尾山の自然の豊かさも、改めて知ることができますよ。

ムササビの食生活

高尾山を歩いているとバッサリ切り落とされた樹木の小枝をたまに目撃します。
これは夜間にムササビが食事をした痕跡です。
ムササビはエサを食べる時にはまず樹木の小枝を鋭い門歯で噛み切り、それから前足を器用に使いながら葉や花などを食べます。噛み切られた枝の切り口は「斜め」になることが特徴です。

ムササビが切り落としたアカガシの枝(5月の男坂で)
枝の切り口は「斜め」になる

ムササビは平地から標高1,000メートル前後の山地に生息し、お寺や神社の森などにも定住します。
日中は樹の穴や巣箱の中で休息して日没30分から60分後に巣穴から現れ、夜間は樹上を移動しながらエサを食べています。

冬眠をしないムササビは一年中活動しています。
完全な植物食者で、高尾山では、

  • 春はヤブツバキの蕾やヤマザクラ・カシ類の花
  • 初夏は樹木の葉
  • 晩夏から秋にはカヤの果実やカエデ類の種子
  • 冬にはスギの球果や雄花、樹木の小さな冬芽、さらにガッシリと硬くて他の季節にはほとんど食べることがないアカガシの葉

と季節によりエサの種類は変化します。

ヤブツバキの蕾の食痕(春)
カヤの果実の食痕(晩夏から秋)
硬いアカガシの葉の食痕(冬)

高尾山では上記のようなエサを食べるムササビですが、長野県軽井沢町では大きなホウノキの葉やカラマツの樹皮を食べ、東京都青梅市の御岳山ではクリをイガごとかじり付いて食べており、エサの種類は地域により若干の違いが見られます。

冬眠をしないムササビに適した高尾山

ムササビは冬眠をせずに一年を通して活動し、リスのような貯食は行わないことから、どの季節でもエサの確保が可能である豊かな森がムササビの暮らしには欠かせません。
また冬季はエサが少なくなることから、冬季にエサを供給できる樹木の有無もムササビの生息を左右します。
高尾山を俯瞰すると、カシ類を主体とする暖温帯系の常緑広葉樹林が南斜面に発達し、北斜面には冷温帯系のブナ類やカエデ類で構成される落葉広葉樹林が広がっています。そして冬季のエサを供給するスギやヒノキで構成される針葉樹林も見られます。

スギの球果の食痕。ムササビの冬のエサになる

高尾山では現在でも昔と変わらずムササビが生息していることから豊かな森であると言え、大都会のすぐ近くにこのような自然が残ることは東京の素晴らしい財産の一つであると思います。

自然ガイド

宮田 浩

1974年生まれ 東京都出身 愛媛大学大学院修了
学生時代は生態学を学び、愛媛県と北海道で外来魚を研究。大学院修了後は環境教育、グリーンツーリズム・エコツーリズムに携わり、その後は高尾ビジターセンターや御岳ビジターセンターでインタープリターとして自然を紹介。現在は東京の川と森を舞台として「東京の自然をゆっくり味わうツアー」を実施中。https://note.com/kawamori_tokyo/

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