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【自然講座】高尾山で見られるスミレの種類を紹介!見分け方のポイントも解説

タカオスミレ

自然ガイド

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春になると高尾山では、登山道の脇でスミレの花を見かけるようになります。
一口にスミレと言ってもたくさんの種類があり、その違いがわかるようになってくると、春の山歩きが一段と楽しくなってきます。
高尾山で見られる代表的なスミレの種類と見分け方のポイントを、自然ガイドの宮田浩さんに解説してもらいましたので、ぜひ参考にして春の高尾山を歩いてみてください。

高尾山で見られる代表的なスミレ

高尾山にスミレの季節がやってきました。
麓も含めて高尾山周辺では25種類が確認され、これに交雑種などを含めると約50種類になることから、高尾山は「スミレの山」と呼ばれています。3月上旬から咲き始め、5月下旬まで様々なスミレを楽しむことができます。

アオイスミレ

アオイスミレ

高尾山のスミレのトップバッター。例年では3月上旬から咲き始めますが、今年2024年はなぜかスタートダッシュが遅れて3月下旬にようやく咲き始めました。
咲き始めの頃はペシャッと潰れているような感じで、両脇2枚の花びら(側弁)が「前ならえ」をしています

タチツボスミレ

タチツボスミレ

北海道から沖縄まで広く分布する日本の代表的なスミレ。アオイスミレと並び早い時期に咲き出します。
咲き始めの頃には良くカメラを向けられますが、花期が長く、山内ではどこにでも普通に見られることから時期を追うと「またタチツボか」という感じになってしまう気の毒なスミレです。

エイザンスミレ

エイザンスミレ

ギザギザの葉が印象的で、すぐに覚えられるスミレです。
名前の由来は比叡山に生えるスミレから。不思議なことに夏を迎えると葉のギザギザはほとんど消えてしまいます。

タカオスミレ

タカオスミレ

ヒカゲスミレの変種で、高尾山で最初に発見されたことが名前の由来になっています。
葉がこげ茶色になることが特徴で、高尾山では非常に人気があるスミレです。

ニョイスミレ(ツボスミレ)

ニョイスミレ(ツボスミレ)

名前の語源は僧侶が手に持つ仏具「如意」の形に似ていることから。
別名はツボスミレ。ツボは庭の意味があり、庭に咲くスミレが由来に。5月中旬頃まで見られます。

コミヤマスミレ

コミヤマスミレ

高尾山では一番遅い時期に咲くスミレで沢沿いの暗く湿ったところを好みます。葉は柔らかく細かな毛が目立ち、葉脈には赤紫色の筋が入ることが多いです。
「深山に生える小形のスミレ」が由来で、植物分類学の第一人者である牧野富太郎が命名しました。

スミレを見分けるポイント

スミレはどれも似ていて「一体これは何スミレ?」となることが多いと思いますが、いくつかのポイントを押さえると見分けることができます。
見分けのキーポイントは花が咲く時期、生える場所、そして体の各部位です。

花が咲く時期

高尾山では3月上旬にアオイスミレとタチツボスミレが咲き始め、次にヒナスミレとナガバノスミレサイシン、エイザンスミレが続きます。その後はアカネスミレ、アケボノスミレが咲き、最後はコミヤマスミレがスミレの時期の終わりを告げます。
このように開花の時期が種類により異なるので見分けるポイントとなります。

3月中旬に咲き出すヒナスミレ
同じく3月中旬に咲き出すナガバノスミレサイシン

好みの場所がある

明るい林床が好きなアカネスミレやアケボノスミレ、湿った場所が好きなタカオスミレとコミヤマスミレ、人家付近が好きなコスミレといった具合にスミレの種類により生える場所の好みがあるので、これらも見分けの一つのポイントになります。

明るい林床を好むアカネスミレ
麓の人家付近にも多いコスミレ

各部位が重要

「これは何スミレですか?」とスミレ全体を撮影した写真を見せられて質問を受けることがありますが、実は写真一枚では判別することが難しい場合があります。

スミレを見分ける一番の手がかりは体の各部位です。
距(花びらの後ろ側に突き出した袋状の部位)の形、側弁の基部や茎、葉の毛の有無、めしべの柱頭の形、葉の形、葉の付き方や広がり方などを確認するとスミレの種類を確実に判別することができます。

距(赤丸の部分)はスミレの種類により形が異なる。写真はタチツボスミレ
エイザンスミレの距
側弁の基部の毛(赤丸の部分)の有無も見分けのポイントに。写真はヒナスミレ

その場ですぐに見分けがつかない場合には、スミレ全体の写真の他に、花全体の写真、花の後方部の写真、花の中心に近づいた写真、葉と茎の写真、根本付近の写真を撮影しておくと良いでしょう。
それらの写真と植物図鑑やインターネットの情報(博物館等のホームページにも詳しい解説あり)からスミレを検索することができます。
細かな部位の確認が必要なので、スミレに詳しい植物図鑑と接写の撮影に優れたカメラが強い味方となります。

図鑑やマクロ撮影できるカメラがあると便利です
自然ガイド

宮田 浩

1974年生まれ 東京都出身 愛媛大学大学院修了
学生時代は生態学を学び、愛媛県と北海道で外来魚を研究。大学院修了後は環境教育、グリーンツーリズム・エコツーリズムに携わり、その後は高尾ビジターセンターや御岳ビジターセンターでインタープリターとして自然を紹介。現在は東京の川と森を舞台として「東京の自然をゆっくり味わうツアー」を実施中。https://note.com/kawamori_tokyo/

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