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【自然講座】冬の高尾山の風物詩「シモバシラ」。氷の花ができる仕組みを解説

自然ガイド

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紅葉の季節が終わり高尾山が落ち着きを取り戻すと、次は冬の風物詩を楽しむ時期がやってきます。その中でも代表的なものが、シモバシラの氷の花。
冬の早い時間に山頂周辺や奥高尾などで、飴細工のような不思議な現象が観察できます。

この「氷の花」ができる仕組みを自然ガイドの宮田浩さんに解説してもらいました。
仕組みを理解して行くと、一段と観察が楽しめますよ。

シモバシラの氷の花とは?

シモバシラと聞くと子供の頃に踏んで遊んだ土の中にできる霜柱を思い浮かべますが、ここでお話するシモバシラは別名「氷の花」と呼ばれ、植物と氷が関係して現れる自然現象のことです。
高尾山では例年12月中旬頃から5号路やもみじ台北側の巻き道、奥高尾方面で見られます。

この「氷の花」は、晩夏から秋にかけては白い花を咲かせるシソ科の植物「シモバシラ」の茎に形成されます。

シソ科の植物「シモバシラ」。夏には白い花を咲かせ、冬になると茎に氷の花を形成する

冬になって枯れた茎に霜柱状の氷柱ができることから、植物の名前自体が「シモバシラ」と名付けられました。
また、その様子から別名でユキヨセソウ(雪寄草)とも呼ばれています。
茎の断面は四角形で触るとカクカクしていることが特徴です。

氷の花はどのように作られる?

シモバシラの茎はやや木質化して固く、枯れた後も水分を運搬する道管が壊れにくいために、根から地中の水分が毛細血管現象でどんどん茎に吸い上げられます。
茎から染み出した水分は気温が氷点下になると凍り始めます。吸い上げられた水分が集まりながら凍っていくので、飴細工のような綺麗な形が作り上げられます。

吸い上げられた水分が飴細工のように凍る。様々なかたちになります

このような現象はシモバシラの他に、カメバヒキオコシ、ヤマハッカ、キク科のアザミ類やカシワバハグマ、さらに園芸種のサルビアなどにも見られます。

氷の花が観察できる条件

氷の花の形成には気温が氷点下になることが必要ですが、もう一つ重要なポイントなのが地中の水分量です。
何日も雨が降らない日が続いた場合、いくら気温が低くても氷の形成に必要な水分が足りないために氷の花は現れません。
数日前にまとまった雨が降り、その後氷点下の日が数日間続くと良く形成され、特に晴天が続くと放射冷却が起こりグッと冷えこむためにベストな状態となります。
また、前日が雨天の場合には気温が意外と下がらないために、次の日は氷の花が現れないことが多いです。

氷の花が現れるには、いくつかの条件が必要

観察場所が日陰の場合には一日を通して観察することができますが、日当たりが良い場所では、気温が低いうちの午前中に観察することがポイントです。

氷の花は根が凍ってしまうまで、気温が低い日には現れ、気温が高い日には消えるという出現と消失を繰り返すために、日数が経過すると茎がダメージを受けて現れなくなります。
また、雪が降ると氷の花自体が埋もれてしまうので、高尾山では12月中旬から1月中旬までに観察することをおすすめします。

12月中旬から1月中旬の間に、探しに行ってみてくださいね

高尾山マガジンには、実際にシモバシラを見に行った様子をまとめたレポート記事もあるので、あわせて参考にしてみてください。
【関連】「高尾山で「シモバシラ」の氷の華を観察。冬の始まりに現れる氷の芸術。どこで見れる? 観察の注意点は?

自然ガイド

宮田 浩

1974年生まれ 東京都出身 愛媛大学大学院修了
学生時代は生態学を学び、愛媛県と北海道で外来魚を研究。大学院修了後は環境教育、グリーンツーリズム・エコツーリズムに携わり、その後は高尾ビジターセンターや御岳ビジターセンターでインタープリターとして自然を紹介。現在は東京の川と森を舞台として「東京の自然をゆっくり味わうツアー」を実施中。https://note.com/kawamori_tokyo/

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