インタビュー

VOL06 高尾山薬王院・桑澤俊宏さん

更新日:

1270年前から人々を見守る修験道のお山。今に受け継ぐメッセージ

参拝のお作法と観光客へのメッセージ

――お護摩修行について教えて下さい。

桑澤お護摩修行には二つの意味があります。
一つは仏様へのお願い。メッセージや自分の願い事を伝えることです。
お護摩の際は木札を納めそれを段に組みますが、この木札はもとは薪でして、色々な祈願をされる信徒さんの煩悩という意味があります。
それにお坊さんが点火をして燃やします。そこから出てくる、火と煙が「仏様の知恵」と考えているのですね。そのお知恵に対して、願い事を書いた木をくべて、お願いごとをするのです。

もう一つは「誓いの印」という意味。
例えばある人が、身体健全という願いをしたとします。これは仏様への誓いでもあるので、それを成就させるために精進します、と誓いを立てるという意味があるのです。

お護摩修行は本堂にて執り行われる。
お護摩修行は本堂にて執り行われる。

――色々なお護摩があるのですね。

桑澤:仏教には回向(えこう)という言葉がありまして、必ずお経の最後に回向文という句がはいります。当山の場合は「帰命頂礼(きみょうちょうらい)」という句から入ります。
お経や、手法を行うことで仏様に様々なお願いや、亡くなった方の供養をするわけですが、最後に回向文を唱えることで、念を押すといいますか、功徳(ご利益)を、信徒や亡き人に回し向けるという意味があります。
五段護摩という正式なお護摩があるのですが、これはご本尊以外の色々な神様や仏様に回向をするもので、供物を捧げ様々な手法をするのですが、2時間半ほどかかるお護摩になります。

――薬王院はお寺ですが、鳥居があったり、お稲荷さんをお祀りしているなど様々な神仏がいらっしゃいます。参拝の際、拍手をしてよいのか?など、お作法を迷うところなのですが。

桑澤:よく言われる事ですね。難しい所でもあるのですが・・・その答えとして(当山の)今の御前様が以前、仰っていた言葉があります。
「拝む気持ちが大切だ」と。形式は重要ではなく、こだわる必要もありません。気持ちが大切だという事です。
また、私が本杜(本堂からさらに階段を登ったところにあり鳥居がある)を説明する時にお話する事があります。
今のご本尊様、飯縄様(飯縄大権現様)は「五相合体(ごそうがったい)」という、一仏四神、一人の仏様と四人の神様が合体してお生まれになった仏様で、本堂でお祀りされている飯縄様は仏様として、一方、本社では、四神の神様を主体にお祀りしていると説明させていただいています。
ですから、拝み方はどちらでも。気持ちを込めていただければと思います。

――観光客も多いと思いますが、正直なところ修行の妨げになるようなことはありますか?

桑澤:難しいところではありますね・・・。やはりマナーだけは気をつけていただきたいです。
例えば、当山のお護摩はお申込みいただいた方以外、誰でも本堂に入り、観ていただく事が可能なのですが、その際に騒いでいたりする方がたまにいらっしゃるので・・・。
ただ、そういった方とお話する事も、一つの修行と考えています。人それぞれ考え方も違いますし、それこそ信仰も違います。そういった方に当山の事をいかに説明するのかも、一つの修行だと考えております。
何事もどう思うか?どう感じるか?だと思っています。

私の先輩に、とても法話の上手な方がおりまして、その方は突然「辻説法だ」と言って、(山門をくぐって直ぐ右にある)天狗像の前に立ち、法螺貝を吹いて、説法を始めます。

なごやかな雰囲気の中、取材させていただきました。
なごやかな雰囲気の中、取材させていただきました。

――たまに僧侶の方が、子どもに法螺貝を触らせてあげたり、観光客と記念撮影されていたりするお姿を見かけます。とても開かれた心で接してらっしゃる印象を受けました。

桑澤:昔はそれこそ「寺子屋」などという呼称もあったくらいで、お寺は学校でもありましたし、よく「~~院」とつくお寺があると思いますが、諸説ありますが、病院だったという説もあります。
また、戸籍を管理する場でもありましたので、地域でお祭りなどの集会を催す場でもあったわけです。
人が集まる場所であったので、本来は開放的であることが、お寺のあり方だと思います。

――最後に、新しい年を迎えるにあたって何かお話をいただければと思うのですが。

桑澤:そうですね・・・、ご家族、ご友人、皆様でお越しいただければと思います。近しい人と良い時間を共に過ごして下さい。
あと、お正月は寒いので厚着をしてきてくださいね(笑)。

あと、これはお伝えしておきたいのですが、やはりゴミが多いので、ゴミは必ず持ち帰って下さい。
(※高尾山では昭和61年にゴミ箱を全て撤去した。それまでは相当な量のゴミがでていたとのこと)
最近はボランティアで拾ってくれる方も沢山おられるのですが。

ゴミは人が出すものですから、人が出さなければ出ないものなのです。
ゴミを捨てようと思って捨てる人も確かにいると思いますが、置いたまま忘れる方もいると思うのです。
例えば、ベンチでご飯を食べて、お弁当のゴミは片付けたけれど、飲み物のペットボトルを忘れたということもあると思います。

そこで大切なのは、それを気づいた時に、自分のではないからと放置するか、ゴミだから持って帰ろうとするかだと思います。
“気付いたら”持って帰ろうという事が大切だと思います。

お正月は境内が初詣客で賑わいます。
お正月は境内が初詣客で賑わいます。

――私たちも気をつけたいと思います。本日はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。

この記事をシェア