インタビュー

VOL02 高尾森林ふれあい推進センター所長・関下俊則さん

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自然を維持していくのも人の気持ち1つ。多くの人に森林の魅力を知ってほしい

高尾森林ふれあい推進センターは、林野庁 関東森林管理局が、森林や林業に対する理解を深めてもらうために運営する施設。京王線高尾山口駅の南側、徒歩数分の場所に位置しており、平成25年に「高尾森林センター」から現在の名称に変わりました。
“ふれあい”という名前は“多くの方に、森林や林業を学んで頂く機会を提供できるように”という意味が込められていると、所長の関下さんに教えて頂きました。今回は、高尾森林ふれあい推進センター所長の関下俊則さんにお話を伺いました。

インタビュー・テキスト:相田修一(編集部) 写真:大作栄一郎

関下 俊則(せきした としのり)

1956年東京生まれ。自然や山が好きで大学の林学科に入り、卒業後は林野庁に就職。青森ヒバの育成や小笠原の移入種対策、ナラ枯れ対策などに携わる。その間にフィリピンに2年間派遣され、森林造成プロジェクトの開発にも従事。2013年4月から現職。

高尾森林ふれあい推進センターの主な業務

――早速ですが高尾山周辺の森林というのは、日本中にある他の森林と比べて、どのような点が違うのでしょうか?

関下:高尾山周辺の森林は大変植生が豊かです。その理由として、地理的にカシなどを代表とする暖帯林と、ブナなどを代表とする温帯林が、ちょうど混ざり合うような場所に位置しているからなんです。
高尾山特有の植物なんかもあり、訪れる方には豊かな自然を味わって頂けると思いますよ!

――なるほど、確かに高尾山周辺は自然が豊富ですよね。一方でそのような豊かな自然を守るためにどのような人たちが、どんな活動をしているのか知らない方も多いと思います。
高尾森林ふれあい推進センターがどのような取り組みをされているのか、教えてください。

関下:高尾森林ふれあい推進センター(以下当センター)は、関東森林管理局内にある組織の1つで、2013年7月現在で14名のスタッフで運営しています。高尾山周辺を活動拠点として、主に、

(1)多くの方に、森林の役割を学習し理解を深めてもらえる機会のご提供や、林業体験やイベントを通じて、森林と親しんでもらえる機会のご提供
(2)日影沢キャンプ場の運営
(3)自然再生に関する取り組み

といった業務を行っています。

(1)に関する具体的内容としては、主に都民の方や、小中学校の生徒さんなどに対して、森林の解説や、植物の観察会、炭焼き体験、林業体験等、各種イベントを通じて、森林の役割を学んでもらったり、森林と親しんでもらうような取り組みを行っています。

丸太切りイベントの様子。
小学生を対象とした丸太切り体験の様子(写真提供:高尾森林ふれあい推進センター)

またより深く学んでもらえる機会として、年に5回程度、森林カレッジという一日かけて体験教室や講演を行うイベントも開催しています。

さらには、森林インストラクター東京会の方にご協力いただき、年に21回程度植物観察会やハイキングなどの企画を行っています。
そのほかに、小中学校や企業からの依頼により、1日高尾山に入って、勉強会を開催することもあります。
加えて、当センターの1Fには、展示室や木工教室が通年でオープンしているので、木の玩具や飾り物などをつくる体験ができ、一般の方はもちろん、特に幼稚園児には人気があるんですよ。

木工教室の田村和夫さん。
木工教室の田村和夫さん。
この日も翌日やってくる幼稚園児のために、木工教室の準備が行われていました。
この日も翌日やってくる幼稚園児のために、木工教室の準備が行われていました。

――想像以上にたくさんのイベント企画があって、びっくりしました。中でも、どのようなイベントが人気なのでしょうか?

関下:イベントにもよりますが、定員オーバーで抽選になるような人気イベントもあるんですよ。
夏休みの子供イベントで、クイズ形式で進行する「子ども樹木博士と木工体験」や、「つる切りとつる籠編み体験」なんかが人気が高いですね。
子供以外の層ですと、50代~60代位で、八王子市を中心とした関東近郊の方に比較的多く参加いただいているようです。

人気の樹木観察会の様子(写真提供:高尾森林ふれあい推進センター)
人気の樹木観察会の様子(写真提供:高尾森林ふれあい推進センター)

――イベントに参加した方に対しては、どのようなことを一番伝えたいのでしょうか?

関下:やはり森林の役割を知ってもらうということを一番願っています。最近は環境問題への関心は高いので森林が温暖化防止に役に立つということは、多くの方が知っていますが、その他にもたくさんの役割があるんですよ。
例えば森林には自然に植生している天然林と、人の手によって植林された人工林とがありますが、人工林は、人が手をかけて適度に間伐をするなどして、育てていかないといけません。
木を切ることは悪いことだと誤解をしている人も多いのですが、立派な山林に育てていくためには、適宜、木を伐採することも必要です。
そのような事例を交えた解説を通じて、森林について知って頂けたらと思っています。

それから、自然を維持していくのも人の気持ち一つです。
自然の豊かさというものをまるっきり負担なく享受するというのではなく、
それぞれの範囲で負担をしながら豊かな自然を味わってほしいと思います。

――本当におっしゃる通りですね。

2ページ:1年中無料で利用できる日影沢キャンプ場 »

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