インタビュー

VOL12 高尾登山電鉄・田中翔悟さん

ケーブルカーの先頭から感じる高尾山の四季

高尾山を訪れる多くの人が利用するケーブルカー。乗ったことはあるけど、普段どのように乗務員の方がお仕事されてるかを知っている方は少ないのではないかと思います。
そんなケーブルカーの業務について、入社10年目の乗務員、田中翔悟さんにお話を伺いました。

インタビュー・テキスト:滝将之(編集部) 写真:石黒久美

高尾登山電鉄

高尾山のケーブルカーとリフトを運営。ケーブルカーの歴史は古く、昭和2年に営業を開始、戦時中に一時休止したが、戦後いち早く営業を再開し、現在は全自動制御のケーブルカーとして、登山客を高尾山の中腹まで運んでいる。高尾山スミカやさる園・野草園も同社が運営。

ケーブルカーの運転や日々の業務について

――ケーブルカーでの1日のお仕事についてお聞かせください。始発は8時からと早くから動いていますね。

田中:勤務は、早番・日勤・遅番の3種類があるんですが、早番の仕事は、駅を開けたり、車両の電源を入れたりなど、始発に向けた準備をしていきます。
営業が始まると、ケーブルカーに乗って車内アナウンスをしたり、乗務時間外は改札や構内放送、また券売機の前に立ってお客様へご案内をするなどの業務があります。
乗務員全員が車両の乗務から、運転、駅での改札までを担当しています。

ケーブルカーに乗務する田中さん。

――紅葉などの繁忙期はだいぶお忙しいと思うのですが、乗務員の方は何人くらいいらっしゃるんですか?

田中:乗務員は私を含め全員で7名います。
ケーブルカーの運行には、最低でも1日に4~5名が必要です。
ケーブルカーは2台が同時に動くので乗務員が2名、あとは上の高尾山駅に運転室があるのですがそこに運転手が1名、下の清滝駅の改札で1名の最低4~5名ですね。

――ケーブルカーの運転は、車内で運転しているわけではなく、運転室で運転してるのですか?

田中:はい、上の高尾山駅に運転室があり、そこに運転手がいます。
運転室にはモニターがあり、コンピューターで制御されており、ボタン等を操作することでケーブルカーを運転してます。2014年に機械が新しくなり、出発・停止もボタンの操作でできるようになっています。
高尾山以外のケーブルカーですと、御岳山ケーブルカーなども機械が新しいのですが、他のところは手動で運転しているところも多いと聞きます。

高尾山駅でガラス越しに見えるのが運転室。

――それは知りませんでした。車両に乗られてる方が運転されてるのかと思ってました。

田中:車両に乗っている乗務員は、アナウンスと運転手の目の代わりをしています。
運転手は運転室の中にいるため、沿線の状況はわからないので。

――そうだったのですね、あと、ケーブルカーは2台あって、終電のあと上と下の駅に停車していると思うのですが、終電で上に上がった乗務員の方はどうやって下山されるのですか?

田中:終電で上がった後は上で泊まります。

――宿直があるんですね。

田中:はい。高尾山駅に宿直室があり、運転手と最終の乗務員と2名で泊まりをします。宿直をするのは週に1回くらいですね。

――どんなふうに過ごされてるんですか? 食事とかは?

田中:食事は自分たちで事前に買っておくなど準備して食べています。業務が終わると、翌日にそなえてゆっくり過ごしています。

小さな頃から乗物が好きでケーブルカーの乗務員に

――田中さんはどのようなきっかけで、高尾登山電鉄に入社されたのでしょうか?

田中:元々小さい頃から電車が好きだったのと、父が鉄道会社で勤めていたもので、それをみて電車の運転手になりたいという憧れがありました。
乗物全般は今でも好きですね。

清滝駅の駅舎内でお話を伺いました。

――入社されてからどのくらいで乗務や運転をするのでしょうか?

田中:入社して3ヶ月は試用期間なのですが、その間にいろいろ指導を受けまして、7月頃にはもう乗務員として車両に乗るようになりました。
試験というかたちではないのですが、社内での教育を受けて乗務するようになります。

――ケーブルカーに乗っているときは車内アナウンスがありますが、そちらも練習されるのですか?

田中:先輩方に話す内容を教えてもらいまして、最初の頃は紙を見ながら、停車中や乗車前とかに話して覚えていきました。
アナウンスは基本的には同じことを喋ってるんですけど、少しずつ人によって言い回しが違います。徐々に慣れてくると「こんなこと言えるかな」など考えたりして試してみたりします。
今の若手乗務員はそのあたりの意識も高くて、いろんなことを工夫して話していますね。

ケーブルカーに乗務中は前方確認やアナウンスが業務の中心になる。

――去年(2018年)から英語のアナウンスも始まりましたね。

田中:英語のアナウンスは最初は恥ずかしさもあったのですが、思い切ってやってみると慣れてくるにつれ抵抗がなくなってきました。
去年の4〜6月にかけて、社員何人かで簡単な英語くらいは話せるようにと勉強をしたのですが、それもあって少しは自信がついてきたのかもしれません。

ケーブルカーから見える生き物たち

――日々ケーブルカーの一番先頭に乗られてて、季節の移り変わりをご覧になっていると思いますが、印象に残る景色などありますか?

田中:やはり紅葉が一番きれいですね。
年によって色づき方がちょっとずつ違いがあり、今年は「ああこの場所がきれいだな」とか思ったりします。
あと、雪景色もきれいですね。
乗車していると、四季折々で違った魅力を感じます。

ケーブルカーの線路沿いは高尾山の中でも有名な紅葉スポット。写真提供:八王子市観光課

――ケーブルカーの線路に動物たちが出てきたりはしないんでしょうか?

田中:よく出てきます。ちょうど昨日はリスを見ました。中間地点より上のあたりにリスがよく通るスポットがあります。
私は八王子で育ったのですが、野生の動物を見るようになったのはここに入社してからなので、見かけるとこれはなんだろうと調べてみたりします。
先日きれいだな〜、と思った鳥を見かけて調べてみたら、コジュケイ(キジの仲間)という鳥でした。
あと、夜になるとイノシシも見ますね。

――イノシシはちょっと怖いですね。

田中:イノシシは近くに寄ってくると、身体も大きいので車両を止めることがあります。
ケーブルカーに慣れてしまっているのか、警笛を鳴らしてもよけてくれないときがあり、そのようなときはさすがに危ないので止めてしまいますね。

――一番最初にイノシシを見たときはびっくりしましたか?

田中:びっくりしました。入社1年目のときにビアマウントの延長運転で乗車していると、夜暗い中、車両の前に現れまして・・・。
車両に電話があり運転室と通話できるのですが、最初はすごい焦ってしまいしばらく声が出ませんでした。ずっと警笛を鳴らしていた覚えがあります。

観光客・登山客へのメッセージ

――日々の業務は大変だと思いますが、どんなときに仕事のやりがいを感じたりしますか?

田中:お客様が車内アナウンスを聞いて「ああそうなんだ」と言っているのが聞こえたり反応がもらえると、うれしいです。
また、去年から英語も勉強してまして、外国人の方にお礼を言われたりすると、ご案内してよかったと思います。勢いよく話されると分からないことも多いのですが(笑)。

――ケーブルカーの業務では、たくさんの観光客や登山客の方と接すると思いますが、何かお客様へのメッセージはありますか?

田中:高尾山は小さな山ですけど、ポイントごとに違った魅力を秘めた山です。1回に限らず何度もその魅力を探しにきていただければと思います。
私自身、入社するまでは肌で季節を感じることがなかったのですが、高尾山で働くようになってから季節感を覚え、1年があっという間に感じるようになりました。
春夏秋冬で違った魅力のある山ですので、紅葉に限らず、この高尾山の四季の魅力を感じにきて欲しいです。

高尾山駅で。乗務の合間に撮影させていただきました。

――本日はお忙しいところ、ありがとうございました。

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【関連サイト】高尾登山電鉄公式サイト

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